トルコリラの長期トレンド

トルコリラが変動相場制へ移行したのは2001年2月のことです。その後現在(2018年2月)までの相場展開は、リーマンショック前と後の二つの大きな局面に分けることができます。

リーマンショック前後のトルコリラ

この時期のトルコリラは、対米ドルで1.3〜1.4リラを中心とした往来相場でした。高値は1.15リラ、安値は1.75リラといったところです(ドル円と同じで数値が高いほどリラ安になります)。上昇か下降だけでなく、横這いの状態も含めてそれぞれの局面が1年〜1年半くらいの長さで続き、およそ7年に及ぶ大きなボックス圏を形成していました。

ところがリーマンショックを境に現在に至るまで、トルコリラは一貫して下落基調となっています。2017年11月にはほぼ4.00リラまで下げています。約10年で三分の一の価値になってしまったわけです。その結果、トルコリラの下落はオーバーシュート気味になっています。つまり割安感がでてきたのです。トルコリラは長期スパンで見て投資する好機が訪れている可能性があります。以下ではトルコリラが売られてきた理由と、割安と判断される理由について解説します。

トルコリラが下落した理由

なぜトルコリラはリーマンショック以降10年にわたって下げ続けているのか。その理由としては以下をあげることができます。

1)高いインフレ率

変動相場制移行前のトルコは驚異的なインフレに悩まされていましたが、移行後は徐々に落ち着き、2004年ころからは8%前後で推移しています。しかしそれでも先進諸国に比べれば非常に高率です。日本や欧米では低インフレ率に悩まされてきたわけですから。インフレは為替相場にとっての大敵です。理屈上、インフレゼロの国の通貨に対してトルコリラは毎年8%ずつ下落することになります。その差を埋めるために、トルコは高金利政策を採っているとも言えます。

2)欧州景気の低迷

トルコ経済は大きくユーロ圏に依存しています。そのユーロ圏はリーマンショック後に長く低迷が続きました。ギリシャを震源地とするユーロ危機も起こるなど、トルコにとって経済的環境が良くありませんでした。そうするとトルコへの投資意欲も盛り上がらず、リラへに対する需要も低迷したのです。

3)その他の要因

以上二つが大きな要因ですが、政治的に不安定だったこと、地政学的リスクにたびたび晒されたこと、経常収支の赤字が続いていることなどもリラが売られてきた要因です。

割安になったトルコリラ

相場をやっている方なら承知の事実ですが、弱材料がいくらあっても市場に織り込まれてしまえばそれ以上相場は下がらなくなります。またそんな状況で好材料が出ればトレンドは反転します。トルコリラはそんな環境にあるといえるでしょう。まず2014年に就任したエルドアン大統領のもと政治が安定しています。独裁色が強まっていますが、安定化には寄与しており、2019年の大統領選挙でも再任が予想されています。世界的な好景気を受けて、国内景気も2018年には一段の成長が見込まれています。ファンダメンタルズが好転しているのです。

こうしたなか、トルコリラの最大の懸念事項はやはりインフレ率ですが、この点はむしろ過大評価ぎみになっています。通貨の実力以上に売られてしまった感があるのです。このことはいくつかの経済レポートなどで見ることができますが、みずほ証券の2017/9/29付けアウトルックから引用させていただきます。下記はトルコリラの対ドルでの購買力平価をプロットしたチャートです。インフレ率が米国よりもトルコの方が高いので全体として下降基調にありますが、下方に行き過ぎていることが見て取れます。

次に実質実効為替相場で評価した場合でも、トルコリラは割安感が強まっています。下のグラフは新興国通貨について実質実効為替相場と実際の為替相場を比較したものです。中国元は過大評価されている一方、トルコリラは過少評価されているということを示しています。

また、ブルームバーグは「2018年の魅力ある新興市場ランキング」と題した記事を2018/1/22に配信しています。この記事で同社は、いくつかの評価基準をスコア化して有望な新興市場をランキングしました。その結果、メキシコがトップで、トルコが2位となっています。また、メキシコとトルコはREER(実質実効為替相場)に競争力があるともコメントしています。※ソブリン格付とは国自体の格付のことです。

GDP 経常収支 資産評価 REER ソブリン格付 合計スコア
メキシコ 0.08 -0.39 0.72 1.53 0.25 2.19
トルコ -0.26 0.15 0.48 2.57 -0.91 2.02
チェコ 0.60 0.97 -0.73 -0.35 1.41 1.91
ポーランド 0.37 0.96 -0.89 0.46 0.25 1.15
マレーシア 0.25 -0.95 -0.60 1.43 0.54 0.67

以上のように、トルコリラはリラ自身の購買力だけでなく他の新興国との比較でも割安な状態となっています。FXではスワップポイントが魅力ながら、常に下落リスク抱えていたトルコリラですが、そのリスクは低下していると言ってよいでしょう。長期投資のチャンスかもしれません。ただし、あくまで突っ込んだところを拾うように心がけましょう。

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