ポンドの特徴

ポンド紙幣

   ポンド(Pound)は複数の国・地域で使用されいる通貨単位ですが、単にポンドと言えば英国のポンド(UK Pound)をさします。明確に区別するために英ポンドと呼ぶこともあります。通貨コードのGBPはGreat Britain Poundからとったもの。Great Britainはイングランド、スコットランド、ウェールズからなるイギリス本島のことです。ちなみに、ブリテン島に北アイルランドと周辺の島々等を含めたものがイギリスであり、国際名称は The United Kingdom(UK)。今でもスコットランドや北アイルランドではポンド以外の通貨も流通しており、まさに連合王国という感じです。

   話しがややそれましたが、ポンドはスターリングというニックネームがあり、STGと略されることもあります。また、ポンド/ドルの組み合わせは特別にケーブルと呼ばれます。これは、海底ケーブルに由来したネーミングなのですが、為替ディーラー間の隠語のようなもので、あまり目にすることはありません。ポンドの特徴は以下のとおりです。

高金利

   ポンドは、取引量の多い4大メジャー通貨の中では高金利であることが多く、主要通貨の中でもオセアニア通貨(豪ドル、ニュージーランドドル)に次ぐ位置を占めています。このため、円やスイスフランを資金調達通貨、ポンドを運用通貨としたキャリートレードがしばしば隆盛します。世界の金融市場が平和でリスク感応度が低下しているときは、キャリートレードがポンドの支援要因となり、市場が混乱してリスク感応度が高くなると、キャリートレードの解消が圧迫要因となります。

MPC

イングランド銀行   イギリスの金利政策は中央銀行であるイングランド銀行(BOE : Bank of England)が決定しますが、その責務を担う具体的な組織がMPC(Monetary Policy Committee)です。MPCは金融政策委員会とも言われ、総裁1名、副総裁2名、委員6名の合計9名で構成されています。原則として毎月上旬の水曜日午後と木曜日午前に開催され、木曜日のお昼頃には結果が発表されます。2週間後には議事録も公表されます。MPCの開催はポンド相場にとって最も注目すべきイベントですが、市場は議事録の内容にも注目します。金利政策は委員の多数決で決定されますので、賛成票・反対票の内訳や誰がどちらについたかといった記録が、政策を占う重要なヒントになるからです。

イギリスの経済

   イギリスもアメリカなどと同様貿易赤字財政赤字の双子の赤字に悩む国です。先進主要国の中では相対的にインフレ率が高いと言えます(参考記事:為替相場とインフレ(デフレ))。

  2015年 2016年 2017年
実質GDP成長率(%) 2.35 1.94 1.79
消費者物価上昇率(%) 0.37 1.01 2.56
失業率(%) 5.37 4.91 4.40
経常収支(100万ドル) -149,805 -154,873 -106,505
貿易収支(100万ドル) -181,205 -182,916 -174,681
金融収支(100万ドル) -169,763 -154,987 -96,382
対ドルレート(期中平均値) 0.65 0.74 0.78
出所:JETRO

ユ−ロ未参加

   イギリスも、ユーロ発足の前段階だったEMS(欧州通貨制度)には参加していました。しかし、為替市場の歴史に名を残すポンド危機により、欧州統一通貨への参加を断念した経緯があります(参考記事:ユーロ危機

スコットランド独立

   イギリスはイングランドを中心とした連合王国(United Kingdom)であり、スコットランドでは1707年の合併以来常に独立派が存在します。独立運動は拡大縮小を繰り返してきましたが、2011年に行われたスコットランド議会選挙で独立派が大勝。2014年9月にはついに住民投票が行われました。結果として残留派がかろうじて勝利しています。しかしスコットランドの独立は、今後もポンドの弱材料となる可能性があります。

ブレクジット

   2016年6月、イギリスではEU(欧州連合)からの離脱を問う国民投票が行われました。結果は当初の予想を覆して離脱支持が51.9%の過半を獲得。これを受けて英国政府は翌2017年にEUに対して正式に離脱を通告しました。2018年12月現在、メイ内閣とEUは離脱手続きについて合意したものの、議会の承認を得られるかは不透明で、2019年3月の離脱に向けて不安な状況が続いています。ポンドにとってブレクジットは弱材料ですから、この問題からは当面目が離せません。

ポンドの長期相場

   下図はポンドドルの長期チャートです。まず目につくのは1980年代前半の大幅下落。この時はポンドに問題があったというわけではなく、高金利などでドルが強かったという状況でした。これは1985年のプラザ合意で修正されることとなります。その後は大きな枠で横ばいでした。ポンド危機(1992年)やリーマンショック(2008年)でもポンドは売られましたが、1.4ドル付近が底値でした。2014年には1.7ドルを一時的ながら回復。しかしスコットランド独立運動、ブレクジットと立て続けに国家を揺るがす問題が浮上。2018年末時点では「合意なき離脱」の可能性があり、ポンドは弱含みの状況となっています。

ポンドドル長期チャート

参考データ

参考サイト(外部)

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