為替相場と北朝鮮情勢

8月8日(2017年)米紙ワシントン・ポストが「北朝鮮がミサイル搭載可能な小型核弾頭の開発に成功」と報じました。翌9日には北朝鮮国営通信が「グアムへのミサイル攻撃を準備」と報じて、北朝鮮情勢は一気に緊迫化。為替市場では円が買われ、直前の110円台から108円台へ上昇しています。

しかしこの現象は腑に落ちません。なぜなら米朝間で戦争が起こった場合、日本国内にある米基地も攻撃対象となり、不測の事態に発展する可能性があります。日本経済が大きなダメージを受けるかもしれないのです。これを考えれば円は急落してもおかしくありません。ではなぜ逆に円は買われたのでしょうか。

理由は、このとき円買いに動いたのはアルゴリズム取引を行うような短期売買筋だったということです。彼らは、市場がリスクオフになったら機械的に安全通貨である円やスイスフランの買いで反応するのです。一方、中期的な経済や政治の情勢を分析して売買するグローバル・マクロ系のヘッジファンドなどは、北朝鮮情勢は不透明すぎて、ほとんど動かなかったようです。

つまり、短期筋が機械的に反応した一方で、ファンダメンタル分析系は様子見だったことから、被害を受ける可能性のある日本の円が買われたという次第です。また、市場参加者の多くは実際に軍事行動が起きるとは考えていないということもあったでしょう。

◎次のページ:米国の長期金利と為替相場|前のページ:為替相場とシェールガス革命

Copyright(c) 2008-2021 All Rights Reserved.