10)FXのリスク

   FXにはさまざまなリスク(損失を被る危険性)があります。為替相場のリスクが一番大きいですが、それだけではなく、他にも以下のようなリスクがあります。以下、順番にご説明します。

  • 為替相場のリスク
  • 証拠金取引のリスク
  • スワップポイントのリスク
  • システム障害のリスク
  • 業者倒産のリスク
  • カバー取引先のリスク
  • 流動性のリスク
  • 取引ルールのリスク

為替相場のリスク

   FXにおいて最大のリスクは何といっても為替相場の変動リスクです。FXは相場商品ですから、為替相場が変動することによって損失を被る危険が常にあります(関連語:イベントリスク)。ドル高円安になると予想してドル/円を買ったのにあいにく下がってしまった、というような場合です。FXはスワップポイントという確定的な収益を生むので、まれに元本が確保された商品だと誤解している方もいらっしゃいますが、それは誤りです。FXは高収益のチャンスがある一方で、元本割れのリスクを伴うハイリスク・ハイリターンな取引です。

証拠金取引のリスク

   FXでさらに注意しなくてはならないことは、証拠金取引だということです。必要な証拠金よりもはるかに大きな額の取引が可能であるため、損失を被った場合のダメージが大きいのです。理論的には元本を上回る損失が発生する可能性があります。現物株の場合は、会社が倒産して無価値になるというのが最悪のケースです。しかしFXの場合は、損失が元本を超えてしまうケースも起こりえるわけです。

  • FXでは法令で自動ストップロスを採用することが義務付けられているので、元本を超える損失が発生する可能性はかなり抑えられますが、それでもそのようなリスクをおかすこと自体避けたいものです。

スワップポイントのリスク

FXFXはペアになっている通貨の一方を買って一方を売る取引ですが、相場の差損益の他に、両通貨の金利差に基づくスワップポイントの受け払いも発生します。原則としては、相対的に金利が低いほうの通貨を買った場合や、相対的に金利が高いほうの通貨を売った場合は、スワップポイントを支払う必要があります。

   スワップポイントが支払いの場合、確定的なリスクとなりますが、それは通貨ペアの選択で回避できます。注意したいのは、受取りから支払いに変わることも起こりえるということです。金利水準は各国の経済事情や政治情勢などの様々な要因を映して常に変動するからです。起こる頻度は少ないものの、一応は頭に入れておきましょう。

システム障害のリスク

   FXをオンライン取引で行う場合は、業者側のシステム、自分のパソコンや周辺機器、そしてインターネット自体に障害が起こるリスクがあります。この中で、最も可能性が高いのは、業者側のシステム・トラブルでしょう。ただ、その頻度は業者によってまちまちです。めったに起こらない業者もいれば、頻繁に起こる業者もいます。こうしたシステムの安定性と、システム障害に対してどこまで責任を負ってくれるかという点は、業者を選択する際の重要なポイントです。

FX   自分のパソコンについては、自分で責任を持つ以外にありません。そんなに壊れるものではありませんが、万が一のために2台持っているとか、停電に備えてノート・パソコンにしておくとか、携帯でも取引できる業者を選ぶとか、一定のリスク回避は可能です。あと、プロバイダー等も含めて、インターネット自体の障害は確実な対策がありません。ただ、ケーブルTVの回線を使ってインターネットを利用している場合、まれに取引システムと相性が悪い場合もあります。

業者倒産のリスク

   相場とリスクは切り離せませんが、業者のリスクまで背負い込むのは避けたいものです。FXの場合、店頭FXでは信託保全が義務付けられていますし、取引所FXでも分別保管のしくみがありますので、業者が倒産しても預けた証拠金が返ってこなくなるというわけではありません。しかし、それがすぐに戻ってくるかというと、手続きなどで時間を要することが想定されます。ですので、安全性の高い業者を選ぶに越したことはありません。

   安全性を計る指標としては、自己資本規制比率が参考になります。これは、その会社がリスクに対してどの程度流動性を確保しているかを表す指標で、毎営業日ごとに計算することが法令で義務付けられています。公開自体は3カ月ごとに店頭で行えばよいことになっていますが、自主的に最新の数字をホームページで公開している会社のほうが望ましいことは言うまでもありません。

カバー取引先のリスク

   これは、業者リスクの一部とも言えることなのですが、もしカバー取引の相手方が破綻すれば、その業者にも多大なダメージが発生します。取引に要する担保等を預けているからです。また、取引の執行にも影響が出るでしょう。一般個人がカバー取引先まで考慮して業者を選ぶのはあまり現実的な話しではありませんが、そういうリスクもあるわけです。口座開設の前に業者から交付される取引説明書などの書面には、法令によってカバー取引先の記載が義務付けられていますので、確認するようにしたいものです。

流動性のリスク

   流動性というのは、どれだけの量の注文を消化できるか、という市場の許容量のことです。大量の注文でも速やかに成立させることができる市場は、流動性が高いと言えます。外国為替市場は世界の金融市場の中でも最も高い流動性を誇っています。

   しかし、マイナーな通貨などは取引量が少ないですし、メジャー通貨でも、ビッグニュースが出て注文が一方方向に集中した場合などは、思うように注文が入らないケースがあります。また、発展途上国の通貨などは、各国の規制や処置などによる取引の制限も起こりえます。流動性の低い通貨は、何かあった時のボラティリティスプレッドも大きくなりがちです。

   FXのような相場商品では、決済したいときに速やかに決済できないのは、無視できないリスクなのです。高金利だからと言って、かなりマイナーな通貨を持ち続けるのは、相応にリスクが高いことを承知しておきましょう。

●マイナー通貨の恐怖

   以前、アイスランドクロ−ナが高金利通貨として人気をはくしたことがありました。しかしアイスランドが債務危機におちいったため、市場での取引が成立しない状態となり、その間、気配値だけが下げ続けました。こうなると、投資家はどうすることもできません。自動ストップロスの制度があっても、それは取引が成立することが前提です。決して取引業者が決済を保証してくれているわけではありません。結局、取引が成立するようになったのは相場が暴落した後でした。

   マイナー通貨では、何か危機が生じた場合、取引が成立しないまま相場だけが大きく変動する危険性があります。さらに、市場のボラティリティが高くなると、急に取引証拠金が引き上げられたりする場合もあります。平常時なら、ある程度取引時間が限られるという点を除けば、マイナー通貨でも問題なく取引できます。ただ、リーマンショックのような異常事態が起こったときは、マイナー通貨は避けておいたほうが無難かもしれません。

取引ルールのリスク

   為替相場の値動きが著しく大きくなった場合や、その恐れがある場合など、業者は緊急的な処置を行うことがあります。例えば 証拠金の額を引き上げたり、自動ロスカットの水準を変更することが考えられます。その結果、証拠金が不足したり、自動ロスカットにかかったりするケースも出てくるでしょう。こうしたルール変更のリスクは、顧客側ではコントロールできませんので、資金に余裕を持たせることが肝要です。なお、ルール変更がありえるかどうか、取引約款等であらかじめ確認しておきたいですね。

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