FX税制の概要

   FXでめでたく利益がでたら、税金を納めなくてなりません。原則としては税率20%(国税である所得税が15%、地方税である住民税が5%)の申告分離課税です。1月から12月までの1年間の損得を計算して、翌年の2月中旬から3月中旬に確定申告を行って税金を納めます。申告は管轄の税務署に行く方法の他、郵送やネットで申告する方法もあります。ただし、利益の額が一定以下だと非課税だったり申告が免除されたりします。また、損益通算や損失繰越という制度もありますので、FXの税制ではそれらを総合的に考慮する必要があります。

申告課税と賦課課税

   FXは申告課税です。納税者が収入や経費を申告して税額を決める方式を申告課税といいます。サラリーマンのように会社が代表して申告している場合も該当します。これに対して初めから納税額が決まっていて、払って下さいと市町村などが通知してくるものを賦課課税といいます。例えば個人住民税・固定資産税・自動車税などの地方税がこれに当ります。

分離課税と総合課税

   FXは分離課税です。分離課税とは特定の所得だけ単独に課税する方式です。これに対して所得の種別に関係なく合算して課税する方式を総合課税といいます。分離課税は固定税率、総合課税は累進税率(所得が大きくなるに連れて税率が高くなる方式)が適用されます。後えば不動産を売却して一時的に大きな所得があった場合、総合課税では所得全体に高い税率が適用されるため、そうした事態を避けるために分離課税制度があります。

FXの益金は雑所得

   FXには店頭FXと取引所FXがありますが、いずれの場合も、FXで発生した益金は「雑所得」扱いになります。ただし特別措置によって、他の雑所得とは分離して扱われることになっています。雑所得は本来は総合課税なのですが、FXで発生した雑所得は分離課税なんです。こうした扱いは先物取引で発生した益金も同様なので、損益通算が行えます(詳しくは後述します)。

   雑所得というのは、給与所得など他の9種類の所得のいずれにも該当しない所得のことで、年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金、個人でやっているアフィリエイト収入、外貨預金の利子などが含まれます。

   雑所得以外の所得には、給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得・雑所得・利子所得・山林所得・退職所得・譲渡所得・一時所得があります。総合課税の対象は給与所得、事業所得、不動産所得(家賃収入など)、配当所得。分離課税の対象は利子所得、山林所得、退職所得、土地建物の譲渡所得などです。

必要経費と所得控除

   FXの場合、利益の源泉は売買差益とスワップポイント収益がありますので、その合計がプラスなら基本的には課税対象となります。ただし、その額が全て課税対象というわけではなく、必要経費を差し引くことができます。税制では、収入から必要経費を差引いたものを所得と言い、さらに所得から所得控除を差引いたものが課税所得となります。これに税率をかけて求めたものが実際に納める税金の額というわけです。

   FXで認めてもらえる経費にはどんなものがあるかと言うと、例えば、為替相場等を勉強するために購入した書籍や、有料セミナーに参加した場合の参加料や交通費などがあります。パソコンの購入費用や通信費も認めてもらえますが、普通は他の用途にも使うので、どの程度FXで使っているのかが問題になります。

   所得控除については、専業主婦のように他に収入がない場合は基礎控除が使えます。これは全ての納税者が無条件で一律に利用できる控除で、金額は38万円(所得税の場合。住民税は33万円)。サラリーマンなど他に収入がある場合は、その税金を計算する段階で基礎控除や給与所得控除が使われているので、分離課税のFXで再度適用することはできません。

損益通算

   損益通算というのは、収益と損失を相殺すること。雑所得の場合は、雑所得同士ならこの損益通算ができます。例えば、FXで損が出た場合に、他にFXオプションやCFDの利益、アフィリエイトの収入があったりすると、そこからFXの損を差し引くことができるわけです。また、他の取引所に上場されている株価指数先物や商品先物などで発生した損益(現物決済を除く)との通算が認められています。なので、取引所FXで利益が発生しても、日経225先物で損失が発生していれば相殺でき、その分課税額が低くなります。

損失繰越

   損失はその年だけでなく、翌年以降の3年間にわたって繰り越すことができます。例えば、1年目は50万円の損失、2年目と3年目はそれぞれ30万円の利益が残ったとします。1年目に確定申告をしておくと、2年目の利益と相殺することができ、税金はかかりません。さらに20万円の損失が相殺しきれずに残るので、さらに翌年へ繰り越すことができます。ただし、損失の繰越控除が認められるためには、損失となったり取引をしなかった年でも確定申告をしておくことが必要です。また、通常の確定申告書のほか、損失繰越用の申告書の提出が必要となりますのでお忘れなく。なお、損失は繰り越すことはできますが、前年に遡って既に収めた税金の還付を受けることはできません。

申告免除

   サラリーマンでかつ給与収入が2000万円以下であれば、申告免除という制度が利用できます。給与所得・退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下のときは、確定申告の必要がないんです。ただし、これは非課税枠というわけではなく、単に手続きが不要というだけです。もし上記所得の合計が20万円を超えた場合は申告が必要で、かつ全額が課税対象となります。なので、20万円を超えるか超えないかというときは、調整して20万円以下に収めたほうがお得かもしれません。

   以上は平成29年の税制に基づいて記述しています。税制はしばしば改正されますので、下記でご確認ください。

  1. 国税庁タックスアンサー
  2. 東京都主税局都税Q&A
  3. ▲このページの先頭へ

先物取引に係る雑所得等の説明書

   以下は税務署で配布している「先物取引に係る雑所得等の説明書」の内容です。税額の計算、損失の繰越控除の計算、申告書付表の書き方が説明されています。正規書面の堅苦しい文章なので少し分かりにくいですが、詳しくお知りになりたい方は参考にしてください。

先物取引の範囲

   先物取引とは、次の商品先物取引及び金融商品先物取引等をいいます。

  • 先物取引とは…商品取引所法第2条第8項又は同条第9項に規定する商品市場において行われる同条第10項第1号ホに定められている先物取引をいいます。
  • 金融商品先物取引等とは…金融商品取引法第2条第21項第1号から第3号までに定められている市場デリバティブ取引のうち、次の金融商品先物取引等をいいます。
  1. 平成16年1月1日以後に行う、平成18年改正前の証券取引法第2条第20項に定められている有価証券先物取引、同条第21項に定められている有価証券指数等先物取引及び同条第22項に定められている有価証券オプション取引
  2. 平成17年7月1日以後に行う、廃止前の金融先物取引法第2条第2項に定められている取引所金融先物取引
  3. 平成19年9月30日以後に行う、金融商品取引法第2条第21項第1号から第3号までに定められている取引

先物取引に係る雑所得等の課税の特例

   先物取引をし、かつ、先物取引の決済(商品先物取引による商品の受渡し及び金融商品先物取引等による金融商品の受渡しが行われることとなるものを除きます。以下「差金等決済」といいます。)をしたことによる事業所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下「先物取引に係る雑所得等の金額」といいます。)については、他の所得と区分して15%の税率による分離課税の方法により所得税が課税されます。

先物取引の差金等決済による雑所得等の金額

   先物取引の差金等決済による事業所得の金額及び雑所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、次の区分に応じて計算します。

  • 先物取引に係る事業所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、先物取引に係る雑所得の金額から差し引きます。
  • 先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、先物取引に係る事業所得の金額から差し引きます。
    (注)先物取引の差金等決済による事業所得の金額及び雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得から差し引くこと(損益通算)はできません。

先物取引に係る課税雑所得等の金額の計算

   課税される先物取引に係る雑所得等の金額は、先物取引に係る雑所得等の金額から、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除及び雑損失の繰越控除の適用があるときには、一定の方法によりこれらの繰越控除を行った後、所得控除額を差し引いた残額(以下「先物取引に係る課税雑所得等の金額」といいます。)です。
※先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除については、次の5で説明しています。

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除

   先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、商品先物取引の差金等決済をしたことにより生じた損失の金額及び金融商品先物取引等の差金等決済をしたことにより生じた損失の金額がある場合には、一定の要件の下で、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年の先物取引に係る雑所得等の金額を限度として、一定の方法により、先物取引に係る雑所得等の金額の計算上差し引くことができるというものです。

  • 先物取引の差金等決済に係る損失の金額とは…この繰越控除の対象となる「先物取引の差金等決済に係る損失の金額」とは、商品先物取引の差金等決済をしたことにより生じた損失の金額及び金融商品先物取引等の差金等決済をしたことにより生じた損失の金額のうち、その差金等決済をした日の属する年分の先物取引に係る雑所得等の金額の計算上差し引いてもなお差し引ききれない部分の金額をいいます。
  • 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の方法は…先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除は、次の順序により行います。
  1. 先物取引の差金等決済に係る損失の金額が前年以前3年内の2以上の年分に生じたものである場合には、これらの年のうち最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引きます。
  2. 雑損失の繰越控除を行う場合には、まず、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を行った後、雑損失の繰越控除を行います。
  3. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けるために必要な手続は…先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けるためには、先物取引の差金等決済に係る損失金額が生じた年分について、当該事項を記載した「平成○年分の所得税の○申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」及び「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書(上記の申告書付表等を含みます。)を提出しなければなりません。
  4. 使用する申告書は…先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受ける場合に使用する申告書は、原則として、申 告書Bと申告書第三表(分離課税用)ですが、次のいずれかに該当する場合は、申告書Bと申告書第四表(損失申告用)を使用します。
    • その年の先物取引に係る雑所得等以外の所得金額が赤字の場合
    • 雑損控除額をその年の所得金額から控除すると赤字になる場合
    • 先物取引の差金等決済に係る損失以外の繰越損失額をその年の所得金額から控除すると赤字になる場合

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