長期下降傾向に入っている円
FX総研では、超長期的な円のトレンドは1995年(または2001年)に歴史的な大天井をつけ、今は基本的には下落トレンドの途上にあると考えています。その理由は、次のとおりです。
- 戦後の円高は、奇跡の復興と言われた高度成長期から連なる経済的繁栄と、世界最大の貿易黒字によってもたらされた。
- その背景には、良好な人口構成、高度な教育、勤勉な国民性とハングリー精神、社会主義国より社会主義的と言われた平等な社会、という基礎的条件があった。
- しかし今は、その全てにおいて陰りが見え、特に人口構成は、猛スピードで進む少子高齢化と人口減少によって悪化の一途をたどっている。
- こうした状況は、国際社会における日本の相対的な地位の低下を招いている。
もちろん、サブプライム問題やリーマンショックによって激しい円高に見舞われたことは記憶に新しいところです。しかし、FX総研ではこれは長い歴史の中では一過性(まぁそれなりに長くは続いていますが、象徴的な意味で)の事件であり、超長期的なトレンドを決定づけるものではないと見ています。この点については、あとでもう一度取り上げます。
では、実際の為替相場がどのように推移しているのか、チャートで確認しましょう。下はドル/円の月足(月間平均値)です。1971年から2009年5月までの38年間の推移を示しています。レートの上昇はドル高・円安を、レートの下降はドル安・円高を表しています。赤い線は60ヶ月、青い線は120ヶ月の移動平均線です。戦後360円からスタートした相場は、上げ下げを繰り返しながらも、1995年のドル最安値(すなわち円最高値=79.75円)までドル安円高傾向が続きました(参考:為替相場の歴史)。その後は横ばい傾向だったのですが、2007年の後半から再びドル安になっています。サブプライム問題が表面化したためです。
(画像をクリックすると大きなチャートや対数化チャートがご覧になれます)
次に、ドル以前に世界の基軸通貨であったポンドを見てみましょう。戦後から1995年までの間に、ポンドの対円価値は7分の1近くまで下落しました(860円→128.30円)。しかし、そこからは回復傾向となり、特に2001年後半からは長期的なポンド高円安傾向が続いたことがうかがえます。金融立国として成功したことが、国際社会におけるイギリスの地位を高め、円との相対的な力関係に影響を及ぼしたと考えてよいでしょう。ただし、それが米国同様にあだとなって、サブプライム問題以後は再び急落していますが。
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次に、資源国通貨の代表である豪ドルと円の関係を見てみましょう。こちらも、2001年以降は豪ドル高円安の傾向を示していますが、ポンドよりもさらにはっきりしています。これは、BRICsなど新興国の台頭で資源の奪い合いが激化し、資源国であるオーストラリアの存在感が高まったためです。
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ドル、ポンド、豪ドル以外でも主要通貨のチャートを見ると、2001年以降は円安傾向を示しています(参考:為替相場の月足チャート)。ただし、何度も言いますが、サブプライム問題まではです。これをどうとらえるべきか。
そもそもサブプライム問題は、世界中でお金が余って過剰流動性が生じる中、リスク・アペタイトが極限まで高まったことが背景にあります。お金を供給したのは低金利だった日本や米国でした。新興国でも先進国でも不動産バブルが生まれ(日本でも東京の一部ではそんな状況でした)、金融デリバティブが花盛りとなったわけです。しかしバブルはいつかはじけるもの。その結果、キャリートレードの巻き戻しなどで円は急騰したわけです。ただこれは、他人の家の家事が飛び火してきたようなもの。通貨の需給関係が特殊な要因でいびつになっただけで、大本のところに原因があるわけではありません。やはり、円の超長期的なトレンドは冒頭にあげた要因が方向性を決めていくのではないでしょうか。
そんなわけで、新興国や資源国の通貨に対しては、円の価値は下落傾向をたどる可能性が高いと考えます。何と言っても、為替相場は相対的な価値を表すものです(参考:為替相場は相対的価値)。仮に日本の国力が変わらなかったとしても、日本よりも成長する国の通貨に対しては、円が下落するのは自然なことです。超長期的な為替相場の推移は、相対的な国力を映す鏡ですから。ただし、ドルについては注意が必要でしょう。ドルも凋落しつつある通貨だからです。10年、20年経った後で「あれが決定打となった」と、サブプライム問題についてエコノミストは解説するかもしれません。
外貨建てMMFの魅力
仮に、資源国や新興国に対しては円安傾向が続くとしたら、どんな投資手法がよいでしょうか。まず注意しなくてはいけないことは、たとえ超長期的には円安傾向だとしても、いつもそうだとは限らないことです。数ヶ月、長いと1年以上は円高という時期があるかもしれません。今回のサブプライムによる円高はまさにその例です(ちょっと極端でしたが)。そのため、基本的には寝かせておける資金を使うことが前提であり、レバレッジも効かさないことです。
そうした条件を考えてお勧めしたいのが、外貨建てMMFです。MMFはMoney Management Fund(マネー・マネジメント・ファンド)の略で、投資信託の一種です。元本の保証はありませんが、公社債や短期金融商品などで運用するため、安全性が高く、換金性にも優れています。いつでも解約ができ、満期もありません。ただ、利回りは普通預金に毛の生えた程度です。こうした仕組みは外貨建てMMFも同じで、利回りも外貨預金と大差はありません。しかし、外貨建てMMFには次のような大きなメリットがあります。
- 為替差益については非課税(参考:外貨建商品の税金比較)
- 為替手数料が外貨預金に比べて小さい
外貨建てMMFも外貨建て商品ですから、為替の差損益が発生します。購入時の為替レートよりも解約持の為替レートが円安なら差益が、円高なら差損が発生するわけですが、うれしいことに差益は非課税なのです(一部の銀行で扱っているものを除きます)。逆に、差損になった場合は、損益通算などの救済処置がありませんが。なお、外貨預金の為替差損益は雑所得扱いですので、申告総合課税となります。外貨建てMMFは、為替差益をねらう商品としては非常に魅力的なんですね。
もう一つ、為替手数料が外貨預金に比べて割安なのも魅力です。外貨建てMMFは購入時に外貨への転換、解約時に円への転換が行われますが、それぞれ転換の際には、業者の利益が織り込まれた為替レートが適用されます。ドル建ての場合であれば、往復で50銭程度になります。外貨預金も仕組みは同じですが、通常は外貨建てMMFの倍くらいの為替手数料をとられます。FX取引の2~4銭というレベルに比べれば50銭は大きいですが、外貨預金よりも有利です。
外貨建てMMFは、為替差益が非課税という魅力を持っていますから、為替の方向さえ見誤らなければ、外貨の高金利が享受できるうえに(分配金については20%の源泉分離課税です)、為替差益もプラスされ、しかもそれが非課税という非常にうまみの大きい金融商品なわけです。
FX取引を使ったヘッジ
外貨建てMMFは一にも二にも購入するときのタイミングが大事です。しかし相場は何が起こるか分かりません。もし、サブプライム問題みたいなことが起これば、そのときは一時解約して円建てMMFなどに避難するといった対応が必要になります。換金性が高いMMFはその点でも安心です。ただ、解約して再び購入しなおすと、転換コストが二重にかかってしまい、余計な為替差損が発生してしまいます。そこで、FX取引でヘッジをかけるという方法もあります。
ヘッジはよく『保険つなぎ』と訳されますが、何らかのリスクが予想されるときに、保険をかけておくという意味です。外貨建てMMFを持っているとき円高に見舞われると、計算上は為替差損をこうむります(もちろん解約しなければ差損は実現しませんが)。このとき、MMFと同額だけFX取引で外貨売りのポジションを持っていれば、MMFの差損をFX取引の差益で帳消しにすることができます。
例えば、1万豪ドル分の豪ドル建てMMFを持っているとしましょう。『今後半年くらいは円高になりそうだ』という場面では、FX取引で1万豪ドルぶんの売玉を建てるのです。そうすると、MMFの買い持ちとFX取引の売り持ちが相殺されて、為替相場の変動には影響を受けない状態となります。専門的な言い方をすればマーケット・ニュートラルとなります。FX取引ならコストも微小です。しかも、この取引に必要なのは1万ドル当たりの証拠金だけですから、数万円ですむでしょう。実際には、自動ロスカットにかからないように、もう少し多めにいれておくことをお勧めしますが。
投資のタイミング
以上はあくまで超長期的なトレンドについて述べたものです。一度投資を開始したら、少なくとも数年、ひょっとしたら10年は保有することを前提としています。そして、そのような投資を開始する絶好のタイミングが、今年中か、遅くとも来年前半までには訪れるのではないかと見ています。当社では、サブプライム問題によってもたらされた円高局面自体はすでにピークアウトしていると考えていますので、その後の最初の押目を狙っているわけです。具体的なタイミングについては、アドバイザリーレポートで適宜取り上げていく予定です。(2009/6/20記)


