為替相場は相対的価値

   身の回りにある”モノ”の価格には、製造コストや流通コストが含まれています。これらのコストつまり原価に利益が乗って、最終的な価格となります。ただし、モノの価格も一定というわけではありません。野菜などの生鮮食料品は特にそうですね。需要と供給の関係で絶えず変動し、時には原価割れの値段で売られることもあります。そういう時はまさに割安でお買い得!

   では、金融商品はどうでしょう。モノではないので、一般的に原価と呼べるものはありません。ただ、適正価格を測る指標のようなものはあります。例えば株だと、最も一般的なのはPER(株価収益率)でしょう。1株あたりの収益を計算し、株価がその何倍かを表した指標です。絶対的な基準ではありませんが、そう理屈にも外れていません。世界の株式市場でも共通の尺度として用いられています。また、PBR(株価純資産倍率)も重要な指標です。その会社が持つ純資産総額(現金や不動産などの資産から負債=借金を引いたもの)を1株あたりに引きなおしたものです。投資家は、これらの指標を参考にして、株価が割安か割高かを判断します。

為替相場は相対的価値   さて、前置きが長くなりましたが、為替相場はどうでしょうか。為替相場はモノや株価と決定的に異なっていることがあります。それは、絶対的な価値ではなく、2通貨の相対的な価値だということです。とりもなおさず、為替相場とは”交換比率”ですから。それゆえに、為替レートには原価もありませんし、無価値=ゼロになったりすることもありません。株式は、その会社が倒産すれば紙くずになってしまいますが、通貨ではそういうことは起こらないのです。また、ドルは円に対して値上がりしているのに、ユーロに対しては値下がりしている、なんていう状況が起こったります。

   では、相対的価値を表す為替相場は、どのような要因によって決まるのでしょうか。それは長期的な相場に影響を及ぼすものや、短期的な相場に影響を及ぼすものなど様々ですが、まずはファンダメンタルズと呼ばれる要因から見ていきましょう。

ファンダメンタルズ

    ファンダメンタルズは一般的に『経済の基礎的条件』と訳されます。と言われても、すぐにはピンとこないですよね。抽象的でちょっと捉えどころのない言葉ではあるんです。例えば、『日本経済のファンダメンタルズは良好だ』と言う場合、経済成長率や企業業績など、経済の土台となるところは良いということです。『こまかい点はさて置き』というニュアンスもちょっと感じられます。

ファンダメンタルズ     ファンダメンタルズは為替相場の市況解説記事でもよく用いられる言葉です。ただ、その場合は、もう少し意味が限定されて、為替相場に影響を与える要因の中で、政治や経済の外部環境をさします。ファンダメンタルズ分析と言う表現もよく使われますが、これは、こうした外部環境から為替相場の動向を予想する手法のことです。

    『サブプライム問題の影響で米国の景気は悪化しており、金利は一段と緩和されるにちがいない。円との金利差はさらに縮小するから、ドル/円は下降基調が続くだろう。』

   という具合です。では、為替相場のファンダメンタルズにはどんなものがあるのでしょうか。次にそれを見ていきます。

金利動向

    金利動向は、為替相場を分析するうえで最も重要な項目と言ってよいでしょう。原則として、高金利であったり利上げが予想される状況は強材料、低金利や利下げが予想される状況は弱材料となります。低金利の国の投資家は、自国の資産で運用するよりも、高金利の国の資産で運用したほうが高い収益を得ることができます。例えば、高金利国の国債で運用しようとする場合、自国通貨を売ってその国の通貨を手当てしなくてはなりません。そうした動きが為替相場に影響を与えるわけです。ただし、為替相場のリスクを負いますので、金利差は一定以上ないと投資意欲は出てきません。ドル/円の場合、機関投資家が対米投資を活発化させるには4%程度の金利差が必要だと言われています。

    なお、高金利だからと言って、単純に買い材料だと考えるのは危険です。度が過ぎた高金利の裏には、インフレとか通貨防衛などのネガティブな要因が隠れている場合があるからです。したがって、金利だけで判断せず、その他の諸条件を含めて総合的に判断する必要があります。

    参考:政策金利

景気動向

    景気の動向は、金利政策を左右しますので、為替相場の重要なファクターとなります。また、景気の良い国はビジネス・チャンスも豊富ですから、海外の企業がその国に工場を建てたり、企業買収を行うなどの投資を行います。そこには通貨の重要が生じますから、その国の通貨には上昇圧力がかかることになります。

国際収支

    為替取引が自由化されており、レートが市場で決定される場合は、需給関係がそこに大きな影響を及ぼします。物やサービスの値段が需給関係で決まるのと同じです。では、通貨の需給関係は何によって左右されるのでしょうか。長期的に見るとそれは国際収支だと考えられます。国際収支には、物の貿易だけでなく、資本取引や海外旅行などから生じる全ての収支を含みます。

国際収支     実際、国際収支に基づく需給関係は為替の長期トレンドに影響を及ぼします。大幅な黒字国である日本の円は、歴史的に上昇圧力にさらされてきました。外国へ商品を輸出して受け取った外貨は、市場で円に変えなければなりませんから、常に円の需給は需要超過だったわけです。一方、米国は巨額の貿易赤字を抱えていますが、なぜドルは暴落しないのでしょうか。それは、資本収支がこれを補って余りある黒字だからです。

   世界の政府や機関投資家は、流動性と安全性を兼ね備えた米国債に投資しています。輸入代金の支払いでドルは流出しますが、海外からの投資によってドルは流入します。このバランスは入超なのです。それゆえ、全体の需給関係で見れば、ドルは余っているというわけではないわけです。

財政収支

    財政収支というのは、政府の収入と支出の差です。政府の収入(歳入)の柱は税収であり、支出というのは公共投資とか社会福祉などです。景気が悪化すると、政府は減税や公共投資を行って景気を刺激しますが、その結果、財政収支は悪化します。反対に、景気が良くなると税収が増え、財政収支は好転します。財政赤字を抱えている政府は、国債を発行して赤字を補填しますが、健全な財務状態とは言えませんから、財政赤字はその国の通貨にとっては弱い材料となります。ただ、日本は多額の財政赤字を抱えていますが、それが円安要因として取り上げられることはあまりありません。しかし、機軸通貨である米ドルにとっては、財政赤字は中長期的な相場動向に影響を与える重要なファクターと言えます。

政治要因

    政治要因としてまずあげられるのは通貨政策です。特に米国の政策が重要です。ホワイトハウスで通商代表部がパワーを持っていたとき、為替は通商政策の道具にされました。『これ以上日本からの輸出にドライブがかかるようだと、もっと円高になってもしらないぞ』という空気が漂った時代もあったのです。また、事実かどうかは別として、『米大統領選挙の年は米国内の輸出業者に配慮して円高傾向になる』といったことも言われます。

    政治不安が高まると、やはりその国の通貨は売られる傾向が強まります。政局が混迷すると、経済政策の決定が遅れたり後回しになったりするためです。

地政学的リスク

地政学的リスク     このところあまり言われなくなくなりましたが、地政学的リスクも為替相場の変動要因となります。地政学(Geopolitics)というのは、地理的な条件(例えば、仲の悪いA国とB国が隣り合っているとか)が政治・経済にどのような影響を与えるか、を研究する学問です。2002年に当時のFRB議長だったグリーンスパン氏が使って以来、株や為替の解説記事でもよく目にするようになりました。

    このときは、米国のイラク攻撃が現実味をおびつつあり、実際にそれが起こったら景気に悪影響を及ぼすリスクがあるよ、という意味で用いられました。その後、地政学的リスクという言葉はテロと結びつき、市場のテーマになった時期もあったのです。イスラム過激派によるテロが話題になると、「地政学的リスクからドルが下落。一方、安全通貨としてスイスフランが上昇。」などという記事がよく見られたものです。

    実際にテロが起こったからと言って、アメリカの景気が悪くなったわけでも、大規模な戦争に結びついたわけではなかったのですが、その頃の市場は「地政学的リスク」が一種のファッションだったわけです。ただ、日本にも、北朝鮮という地政学的リスクの要因はあり、なにもアメリカvsイスラム圏に限った話しではありません。世界がきな臭くなってくると、地政学的リスクが市場のテーマに再び浮上することがあるかもしれません。

内部要因

   内部要因というのは、ファンダメンタルズとは別に、市場自身が内部に抱えている要因を意味します。具体的には取組み状況や市場参加者の個別の事情などです。例えば、弱材料が重なり、下降基調を続けてきた相場が、さしたる材料もないのに急激に反発することがあります。もちろん、安値拾いの新規買いもあるでしょうが、動きが急なときは、多くの場合、売り方(うりかた)の買い戻しが主因。特に、資金量が多く、ある程度中長期の取引を行うヘッジファンドが買い戻しや転売に動くと、変動幅が大きくなります。

   また、相場の変動率(ボラティリティー)が高くなると、ファンドなどはポジションを縮小する動きが出てきます。VaR(バリューアットリスク)と呼ばれるリスク管理手法において、リスクの計測値が高まるからです。すると彼らは、相場の見通しとは関係なく、機械的に現金比率を高めるため、ポジションの決済に動きます。

内部要因    このような動向は、ニュースや経済指標などの外部要因に基づくものではなく、市場参加者の個別の事情に基づく行動なので、内部要因というわけです。ただ、為替市場は相対取引であるため、市場参加者の動向がつかみにくく、内部要因が市況解説で取り上げられることはあまりありません。これが例えば商品先物市場などでは、取引所取引ゆえに市場参加者の動向が見えやすく、また売買高も少ないので、特定プレーヤーの動向が市場全体に影響を及ぼします。そのため、内部要因の分析は重要な作業になります。為替相場においては、コミットメンツ・オブ・トレーダーズくらいしか手がかりがありませんが、説明が困難な相場の動きには、内部要因が絡んでいる場合が多々あることを知っておくとよいでしょう。

テクニカル要因

   市況解説の記事では、よく『テクニカル要因主導の上げ』とか、『テクニカルな売り』という表現を見ることがあります。これはどういうことを指しているのでしょうか。相場の大きな流れはファンダメンタルズにそって形成されますが、ファンダメンタルズはそうそう毎日変化するわけではありません。目立ったニュースもなく、これといって重要な経済指標の発表がない日は、取引の手がかりを欠きます。そんなときは、テクニカル分析に基づいた取引や、システムトレードを行っている市場参加者の売買動向が、市場をリードすることがあります。

テクニカル要因    彼らは、テクニカル分析上の売買ポイントで注文を執行します。そこへ、銀行ディーラーなどが提灯をつけると、特に材料が出たわけではないのに相場が動きます。こういった状況を、テクニカル要因主導と呼ぶわけです。一般に銀行ディーラーは、あまり相場感を持たないで取引を行います。市場の動向を観察しながら、トレンドの出そうな動きについて行こうとするわけです。要因が明確ではなくても、例えば上値抵抗線と見られた水準をブレークしたら、買いを入れます。こうした動向が、さらに相場の動きを加速させるのです。ただ、そのようなテクニカル上の売買ポイントは、多くの市場参加者が注目しているので、経済指標の発表がないような日は、そうしたテクニカルな取引が主体となる下地が既にあるわけです。

 テクニカル分析入門

市場心理

   為替相場を形成する要因として、市場心理は無視できません。それどころか非常に重要なファクターです。しかし、ファンダメンタルズ、テクニカル要因と違って、数値やビジュアルで把握できないので、扱いにくいという側面があります。そのため記者やエコノミストの市況解説は目に見える事実が中心になり、市場心理についてはあまり言及されません。

   相場をやっていると、誰でも感じることがあります。それは、材料やニュースに対する市場の反応の仕方が、その時々でまちまちだということです。実際、市場は冷静でも客観的でも公平でもありません。強材料と弱材料が同時に出た場合でも、一方により強く反応したり、一方をまったく無視するようなことさえあります。これは、市場心理が中立ではなく、どちらかに傾いているためです。こういう状態をよくバイアスがかかっていると言いますが、市場はいつもそんな状態なのです。

市場心理 では、とらえどころのない市場心理を、どうやって取引判断に生かせばよいでしょうか。ここで、ブルベア指数を想起する方もいらっしゃるかもしれませんね。ブルベア指数というのは、市場参加者にアンケートをとり、強気派(ブル)と弱気派(ベア)の割合を調べたものです。経験則的に、どちらかに極端に傾いたときが天井・大底であることが多いのです。ただ、信頼できる指数を発表している会社なり団体があれば利用できますが、為替相場に関してはあまり聞きません。それに、あったとしてもアンケートをとって集計する手間がかかりますから、即時性に欠ける難点があります。

   結論を言うと、市場心理は自分で感じるしかありません。実に無責任な言い方ですが、ある程度相場をやっていればできるようになります。何人かで集まって会話をしているとき、誰でもその場の空気が読めるのと同じです(読めない人もいますが)。自分でポジションを持たず、相場の動きや解説記事の言い方を観察していると、何となく相場の雰囲気とかムードが伝わってくるものです。『これは熱狂状態にあるから利食い時だな』とか『市場が狼狽している今は買い所だ』とか。

   ただし、あくまで自分でポジションを持っていないという前提です。これが一旦自分でポジションを持つと、市場の中に巻き込まれ、ムードもなにもあったものではなくなるのです。ポジションを持っていても市場心理を感じるために必要なことは、気持ちに余裕があることです。心理的な余裕は資金の余裕から生まれます。資金に余裕があれば、総悲観の中でポジションを投げる側ではなく、安値を拾う側に回れます。我に返ったときに、『なんであんな安値で売り払ってしまったんだろう』と悔やむのではなく、傍観者の目で冷静にチャンスを判断することができるのです。

   もちろん、市場心理という曖昧模糊としたものが相手ですから、読みまちがうことはあります。数値やビジュアルで把握できないものには頼らないというのも、一つの割り切りでしょう。それでも、市場心理を一切考えないで相場を張るのは、相場の上達を少し阻害するように思えます。ただし、市場心理を読むのはあくまで補助的な手段です。そこに頼って取引すべきものではありません。

   市場心理について、少し補足しておきます。

美人投票の理論

    歴史上、最も著名な経済学者の一人であるケインズ(ジョン・メイナード・ケインズ)は株式投資でも大成功を収めていますが、彼が相場の極意として語ったのが『美人投票の理論』です。代表著作である『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、次のように述べています。

    『玄人の行う投資は、次のような美人投票に例えることができる。100枚の写真の中から最も美しい6人を選ぶ投票を行い、その結果に一番近い投票を行った者に賞金を出す、というコンテストだ。このコンテストでは、投票者自身の好みではなく、他の投票者が好みそうな女性に投票しなければならない。しかも、投票者全てが同じ観点で考えることになる。』

    ケインズがこの例え話しで言いたかったことは、『相場というものは、みんながどう思っているかをみんなで当てるゲーム』だということでしょう。FX取引でも、市場参加者が相場をどう見ているかを考えることは重要なことです。もちろん、それが分かれば苦労はないのですが、『相場の上げ始めで仕入れた連中は、そろそろ利食いたくてうずうずしているはずだ』とか、『この経済指標が予想を上回ったら市場はこんなふうに反応するだろう』などとか考えることは、売買方針のヒントを与えてくれます。

市場のテーマ

市場心理 為替市場では、いつも市場のテーマみたいなものがあります。それは、市場参加者の関心を最も引き付けている時事であり、一種のファッションです。それが何かを常に頭に入れておくことは重要なことです。テーマに関するニュースには、より敏感に相場が反応するからです。ある時は貿易不均衡であり、ある時は地政学的リスクであり、ある時はサブプライム問題であったり、テーマは移り変わります。着るものには無頓着な方も、為替相場のファッションにはアンテナを張っておく必要があります。

強気相場は悲観の中に生まれ

    相場の格言に、『強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく。』というものがあります。市場心理をよく表しています。この4つのステップのうち、最初と最後には手を出さないほうが無難です。大底や天井を捕らえることは非常に難しいからです。2番目と3番目で儲けましょう。もちろん、今は何番目のステップかなんて分かりません。底打ちを確認してから押し目を買う、天井打ちを確認してから戻りを売る、そういう方針がよいということです。

ユーフォリア

   ファンダメンタルズに好材料が続出して見通しが極めて明るくなり、市場参加者のほとんどが強気に傾くことがあります。買いポジションを持っていれば安心していられ、不安の入り込む余地がありません。市場全体がなにか微熱に浮かされたような状態となり、高揚感が覆います。こういうのをユーフォリアと言います。イタリア語で『幸福感』という意味です。上の相場格言で、4番目のステップに当たります。市場がユーフォリア状態になっていると感じたら、相場は休むことです。何かのきっかけで相場が崩れるかもしれず、そうなったら下げがきついからです。逆に、売り建てるのも危険です。バブルへと続いていくかもしれませんから。

オーバーシュート

   相場が行き過ぎることをオーバーシュートと言います。ただ、どこまでがオーバーシュートではなく、どこからがオーバーシュートなのか、明確に線引きすることはできません。もっぱら感覚的なものなのです。しかし、オーバーシュートしていると感じらるときは、市場心理が冷静ではない状態の場合です。多くの人(特に素人筋)が慌ててしまって、材料に過剰反応したり、資金的に苦しくなって損切りしているわけです。オーバーシュートによって相場は割高・割安なレートを示現しますので、仕掛けるチャンスです。しかし、オーバーシュートしている相場はボラティリティーも上がっており、難しい状態になっているはずです。さらに行き過ぎるかもしれません。資金に余裕を持って動きましょう。

購買力平価

   ここまで、為替相場を形作る様々な要因について見てきました。実際の相場はいくつもの要因がからみあって形成されますから、必要に応じて読み返してください。そうすることで、為替相場への理解が深まっていくでしょう。さて、最後に購買力平価説(Purchasing Power Parity Theory)について少し触れておきたいと思います。これは、『為替相場は通貨の購買力により決定される』という考え方です。為替相場に関する学説はいくつかありますが、代表的なものですし、長期的な推移を解説する際に時おり引き合いに出されるので、知っておいて損にはなりません。

   購買力平価説の基本は、A国とB国の間で物やお金の流れが完全に自由なら、同じ商品は同じ価格となるように、為替レートは調整されるはずだという考え方です。例えば、マクドナルドは世界各国に出店し、均質な商品を供給しています。この考え方に従えば、ビッグマックの値段が米国で2ドル、日本で250円とすれば、為替レートは1ドル=125円が適性レートということになります。

購買力平価実際にイギリスの有名な経済誌『エコノミスト(The Economist)』は、ビッグマック指数というものを掲載しています。確かにビッグマックという均質な商品の価格をベースに、為替レートを比較することは分かりやすいですし、参考になります。ただ、購買力は物価全体から総合的に判断されねばなりませんから、エコノミスト(こちらは雑誌名ではなく評論家のほう)が購買力をベースに為替レートを説明するときは、生産者物価指数や消費者物価指数など、いくつかの物価指数を使うことが一般的です。

   では、実際に購買力で為替レートは説明できるのでしょうか。10年単位の長期的トレンドにおいては、ある程度できると言えます。購買力平価はいつの時点を基準とするかなどで結果は変わってきますが、1973年4月を基準にすると、ここ10年ほどのドル/円は、生産者物価指数を上限、輸出物価指数と生産者物価指数の中間点を下限とするバンドの中で推移しています。ちなみに、2008年3月時点では、生産者物価指数は117円前後、中間点は92円前後となっています。

   購買力平価説の考え方に基づくと、インフレ率も為替相場に影響を及ぼす重要な要因となります。例えば先ほどの例で、ビッグマックの価格が、米国ではインフレのために2.5ドルに上昇する一方、日本では変わらないとします。すると、2.5ドル=250円から導かれる為替レートは100円です。インフレは通貨価値の下落ですから、日本よりもインフレ率の高い米国のドルは、対円で下落することになるわけです。実際の相場では、インフレ率の高い国は金利も高いので、資金が集まって上昇する場合もあります。しかし、金利からインフレ率を差し引いた実質金利が高いか安いかが問題です。名目金利が高くても、実質金利が低ければ、その通貨は長期的には下落する可能性が高いと言えます。

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